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1000万人を超える骨粗鬆症患者 [病気]

骨量や質が低下する

「骨粗鬆症」は、骨の量が減少すると同時に、骨の中の構造が変化して質が低下し、骨が弱くなる病気です。そのため、通常なら骨折しないような軽いつまづきなどでも骨折を起こしやすくなります。高齢になるにつれて患者数は増加し、社会の高齢化が進む日本では、現在その数が1000万人を上回るといわれています。女性は、男性に比べて若い年代で骨粗鬆症になりやすく、70歳ぐらいになると半数以上が骨粗鬆症であると考えられます。一方、男性は、80歳代後半になると約半数が骨粗鬆症であると考えられます。骨粗鬆症は、以前は治療が困難とされていましたが、最近は有効な治療薬が開発され、骨折を防ぐことが可能になっています。

骨が形成される仕組み

骨は、常に古い骨が壊され、新しい骨がつくられて、維持されています。このような破壊と再生の繰り返しを「骨代謝」といいます。が骨代謝には、「破骨細胞」と「骨芽細胞」が関係しています。被骨細胞が古い骨を壊すと、そこへ骨芽細胞が現れ、新しい骨をつくるのです。ところが、破骨胡胞の働きが強くなりすぎたり、骨芽細胞の働きが不十分になるなど、破壊と再生のバランスが崩れると、骨の量が減ったり、骨の構造に変化が生じて、骨租軽症が起こります。

骨折しやすい部位

骨には、表面付近を覆う「皮質骨」と、その内部にある海綿状の「海綿骨」があります。海綿骨は、小さな骨が柱のように縦横につながって板状となり、縦方向、横方向から加わる負荷を支えています。海綿骨は骨代謝が盛んなため、骨粗鬆症が進みやすく、骨粗鬆症になると、小さな骨が細くなったり、つながりが切れて、スカスカの状態になります。骨粗鬆症で骨折しやすいのは、この海綿骨の割合が多く、しかも負荷のかかりやすい部分です。背骨や手首、腕のつけ根、大腿骨のつけ根が挙げられます。特に大腿骨を骨折すると、寝たきりになりやすいので、注意が必要です。

自己チェック

カルシウム不足・運動不足の高齢者は注意

骨租髭症は、年を重ねれば誰でもなる可能性があります。しかし、特に次のような要因が加わると、骨粗鬆症になる時期が早まったり、悪化しやすくなります。
  • 運動負荷の減少十分な骨代謝の維持には、重力や運動の負荷などの刺激が必要です。宇宙飛行士が無重力状態で過ごすうちに骨が弱くなるように、運動が不足したり、寝たきりの生活を送っていると、骨粗鬆症になりやすいといえます。
  • ホルモンバランスの変化女性ホルモンの「エストロゲン」には、破骨細胞の働きを抑えるなど、骨代謝のバランスを正常に保つ働きがあります。女性の場合、閉経して女性ホルモンの分泌が急激に減少すると、骨代謝のバランスが崩れ、骨の量や質が低下します。
  • カルシウムの欠乏体内のカルシウムのほぼ99% は骨に蓄えられ、骨はカルシウムの貯蔵庫の役割を果たしています。カルシウムは、心臓や神経、筋肉など、全身の細胞が正常に働くために欠かせない成分です。細胞に必要なカルシウムが不足すると、貯蔵庫である骨からカルシウムが血液中に溶け出し、全身に供給されます。そのため、食事で摂取するカルシウムの量が不足すると、骨から溶け出すカルシウムの量が増えます。
偏食や過剰なダイエット、あるいは胃を切除して十分に食事がとれなかったりすると、カルシウムなど必要な栄養が不足して、骨が弱くなっている可能性があります。また、体質的に骨粗鬆症になりやすかったり、薬の副作用で骨粗鬆症になりやすいこともあります。

骨粗鬆症の自己チェック

この自己チェック表は閉経後の女性、60歳以降の男性用です。1~10までに2つ、または7~10にひとつあてはまる項目があれば骨粗鬆症が疑われます。
  1. やせ型・小柄
  2. 負荷のかかる急激なダイエットを経験
  3. 幼少期から偏食
  4. カルシウム摂取不足
  5. 慢性の運動不足
  6. テキスト
  7. アルコール・たばこの大量摂取
  8. 家族が骨粗鬆症で骨折
  9. 胃を切除
  10. 両方の卵巣を閉経前に切除
  11. ステロイドを長期服用

検査・診断

背骨のつぶれや骨密度の測定

  • 骨折の有無骨粗鬆症が疑われる場合は、X線検査で背骨の状態を調べます。背骨は、円柱状の骨が積み重なってできており、骨がつぶれると(圧迫骨折)、「身長が低くなる、腰が曲がる、背中や腰が痛い」といった症状が現れます。骨の質を測定することはできませんが、骨折が認められる場合は、骨の質が低下していると判断できます。なお、身長が低くなるなどの症状に気づいた場合は、受診が勧められます。
  • 骨密度骨の量(骨密度) を測定します。測定法には、DXA法、PQCT法があります。
  • 骨代謝マーカー尿検査や血液検査を行って、骨代謝のバランスを確認します。骨が破壊される過程で放出される成分を測る「骨吸収マーカー」、骨がつくられる過程で使われる成分を測る「骨形成マーカー」があります。これらの値を測ることで、どの程度、骨が壊されたりつくられているかがわかります。
  • 診断20~44歳の人の平均値と比べて、骨密度が70%未満の場合、あるいは80%未満でも背骨などに骨折が認められる場合に、骨粗鬆症と診断されます。

骨粗鬆症において成果をあげている新薬について

お年寄りが「骨租軽症」で骨折すると、それをきっかけに寝たきりになつたり、介護が必要になることが少なくありません。社会の高齢化が進む日本では、骨粗鬆症による骨折を予防することが大きな課題となっています。最近では、骨粗鬆症の治療薬の開発が進み、骨折を防ぐ効果のある新しい薬が登場しています。骨租髭症の薬には、主に「破骨細胞が骨を壊す働きを抑える薬」と、「骨芽細胞が骨をつくる働きを高める薬」の2種類があります。このうち、現在日本で使われているのは、破骨細胞の働きを抑える薬で、「ビスフォスフォネート製剤」は20002年から、「ラロキシフェン」は04年5月から使用されています。ほかにカルシウムの吸収を高める「活性型ビタミンD製剤」も使われており、現在、これら3種類の薬が骨粗鬆症の治療薬の中心となっています。

主要3種類の骨粗鬆症を改善する薬

ビスフォスフォネート製剤

ビスフォスフォネート製剤は、体内に入ると骨の表面に付着します。付着したビスフォスフォネート製剤は、破骨細胞が骨を破壊するときに細胞の中に取り込まれます。すると、破骨細胞の働きが阻害され、骨の破壊が抑制されます。その結果、骨の量が増加し、骨折の予防につながるのです。海外の調査では、ビスフォスフォネート製剤を使うと、骨の量(骨密度) が3年で5%以上増加することが明らかになっています。また、ビスフォスフォネート製剤を服用すると、服用しない場合より、骨折の頻度を半分以下に抑えられるというデータがあります。

注意点

ビスフォスフォネート製剤は、非常に吸収されにくい薬です。特に、食後に服用すると、食事で摂取したカルシウムと結合してしまい、骨に対して作用しなくなります。そのため、服用後は、最低でも30分、できれば30分以上、食事を控えることが大切です。時間をあけて食事するときも、牛乳などカルシウムの多い食品は、最初にとらないほうがよいでしょう。また、ビスフォスフォネート製剤は、空腹時に服用するため、消化管の粘膜を刺激し、食道炎や胃炎などの副作用が起こることがあります。

ラロキシフフェン

女性ホルモンの一種である「エストロゲン」は、骨にある受容体に結合することで、骨の破壊を抑制します。ラロキシフェンは、エストロゲンとは異なりますが、エストロゲンと同じように受容体に結合し、骨の破壊を抑える薬です。ラロキシフェンは、コレステロールの合成に関しても、エストロゲンと同様に働いて、コレステロール代謝によい影響を与えます。また、エストロゲン製剤は、副作用として乳がんなどの発生が増える可能性があるといわれていますが、ラロキシフェンは、乳腺や子宮などに対しては、エストロゲン製剤とは反対に、がんの発症リスクを増加させないことがわかっています。このように、ラロキシフェンは、エストロゲンのプラスの作用が得られ、マイナスの影響を避けられるため、エストロゲン製剤に代わる治療薬として注目されています。骨に対する効果は、海外の調査で明らかになっています。ラロキシフェンを服用したグループでは、服用しないグループに比べると、過去に骨折の経験のある・なしにかかわらず、新たな骨折がかなり減少し、骨折を防ぐ効果が高いことが認められています。

注意点

ラロキシフェンは、エストロゲンが十分分泌されている人には適しません。主に閉経後の女性に使われ、月経のある女性や、男性には使われません。更年期の症状を悪化させる可能性があるので、更年期症状の強い人にも向きません。また、血を固まりやすくする作用があるので、静脈に血の塊(血栓) ができやすい人にも使用しません。

活性型ビタミンD製剤

ビタミンDは、カルシウムの吸収を高め、骨の再生を助ける作用があるので、骨を強くするためには欠かせない栄養素です。食べ物から摂取されたビタミンDは、そのままでは作用せず、体内で活性化されて初めて効果を現します。そこで、ビタミンDを活性化された状態に合成したのが、活性型ビタミンD製剤です。すでに活性化されているため、小腸でのカルシウムの吸収を高める効果が強く、骨の破壊を抑える薬と併用すると、より効果が上がります。

注意点

活性型ビタミンD製剤を過剰に使うと、ビタミンDの作用が強く出すぎて、血液中のカルシウムが増えすぎたり、腎臓の機能に悪影響を及ぼすことがあります。

骨粗鬆症予防に最重要となるカルシウム摂取とさらにカルシウムの吸収を妨げる食品についても心得ておくことが大切です。


タグ:骨粗鬆症
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